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旧リース基準から企業会計基準第34号へ:何が変わり、何を準備するか

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2024年9月公表)への移行で、借手の会計処理はどう変わるか。旧基準(第13号)との Before/After 比較、使用権モデルの仕組み、適用時期・経過措置、移行準備のポイントを実務担当者向けに解説します。

旧リース基準から企業会計基準第34号へ:何が変わり、何を準備するか

「うちは賃貸借契約で設備を借りているだけだから、リース会計はあまり関係ない」——そう思っていた経理担当者にとって、2024年9月に公表された企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、対応が必要な大きな変化をもたらします。

旧基準のもとでは、オペレーティング・リース(ファイナンス・リースに分類されない賃貸借)に該当する契約は、毎期のリース料を「賃借料」として費用計上するだけで、貸借対照表には何も計上しなくて済みました(オフバランス処理)。オフィスの賃貸借、コピー機のレンタル、社用車のリースなど、多くの契約がこの処理の対象でした。

新基準(第34号)が採用する使用権モデルでは、この前提が根本から変わります。「資産を使う権利」そのものを資産として認識し、支払義務を負債として計上するのが原則です。これにより、以前はオフバランスだった長期の賃貸借契約が、貸借対照表の両側に計上されることになります。

強制適用は2027年4月1日以後開始する事業年度から。早期適用は2025年4月1日以後開始する事業年度から認められています。今まさに、何を変えるべきか、何を準備すべきかを整理しておく必要があります。


まず結論

企業会計基準第34号の最大の変化は、借手の単一モデル化です。旧基準で「所有権移転外ファイナンス・リース」や「オペレーティング・リース」として分類されていた多くの契約が、新基準ではすべて原則オンバランスの対象となります。

旧基準は「ファイナンス・リース」か「オペレーティング・リース」かで処理を分けていました。ファイナンス・リースはオンバランス(資産・負債を計上)、オペレーティング・リースはオフバランス(費用処理のみ)という二分法です。

新基準は、この二分法を借手には適用しません。借手はすべてのリースについて、原則として使用権資産とリース負債を計上します。「賃貸借のような見た目」であっても、契約にリースが含まれると判定されれば、オンバランスが求められます。

貸手の分類(ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの二区分)は維持されています。借手の会計が大きく変わる一方、貸手の会計は基本的な構造を引き継ぐ設計です。

適用時期と経過措置については後述しますが、移行の影響を早期に把握し、システム対応・契約情報の整備・財務諸表への影響試算を行うことが、今後の実務対応の核となります。


この基準が生まれた背景

旧基準で解けなかった問題

旧来の日本のリース会計(企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」、2007年公表)は、借手のリースを「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分けて処理していました。

ファイナンス・リースの定義は、「中途解約ができず(解約不能)、借手が原資産の経済的利益を実質的に享受し、かつ使用に伴うコストを実質的に負担する(フルペイアウト)」というものです。このいずれかの条件が欠ける場合は、オペレーティング・リースとして費用処理だけが求められました。

この仕組みには構造的な問題がありました。オペレーティング・リースに分類された契約はすべてオフバランスになるため、長期にわたって実質的な使用権を持ち相応の支払義務を負っているにもかかわらず、その財政状態への影響が財務諸表に反映されないという問題がありました。

例えば、5年間のオフィス賃貸借契約を結んだ企業は、将来の賃借料支払義務が数億円に及んでいても、貸借対照表には何も計上されません。投資家や債権者が企業の財政状態を正確に評価しようとすれば、注記情報から将来の支払コミットメントを手作業で読み取るしかありませんでした。これが財務諸表の比較可能性と透明性を損ねる、旧基準の根本的な課題でした。

また、境界線の引き方が問題を複雑にしていました。フルペイアウト基準(リース料の現在価値が資産の公正価値の90%以上など)を一種の「閾値」として機能させることで、意図的に閾値を下回る契約設計が行われ、実質的には長期拘束性の高い契約でもオペレーティング・リースに分類する余地が生まれていました。このような、経済実態と乖離した会計処理を基準が容認していた点も、見直しの対象となりました。

基準設定主体の問題意識

ASBJ は 2024年9月に企業会計基準第34号を公表する際、旧基準の問題点を明確にしています。日本基準のリース会計が国際的な会計基準(IFRS 16)と乖離していたことが、改訂の主要な動機として説明されています。

IFRS 16 は2016年に IASB が公表し(適用開始 2019年)、借手の会計を単一モデルへ移行させました。IASB の結論の背景(BC)では、オフバランスのオペレーティング・リースが財務諸表の比較可能性と透明性を著しく損ない、IASB が 2010年に実施した調査では主要な上場企業のオフバランス・リース債務が約 1.25兆ドルに上ると推計されたことが、改訂の根拠とされています。

日本においても、ASBJ は国際的なコンバージェンスの観点から IFRS 16 の考え方を日本基準に取り込むことを決定しました。第34号の核となる考え方は IFRS 16 の使用権モデルと実質的に同一であり、財務諸表の国際的な比較可能性を高めることが公表の主要な目的の一つとして説明されています。

解決アプローチ:使用権モデルの採用

新基準が採用した解決アプローチは、使用権モデルへの転換です。

資産の「所有」ではなく「使用する権利」に着目します。借手が一定期間にわたって特定された資産の使用を支配する権利を持つなら、その権利は資産(使用権資産)として認識されるべきであり、それに対応する支払義務は負債(リース負債)として認識されるべきである——これが使用権モデルの論理です。

旧基準のように「ファイナンス・リースか否か」で処理を分ける二分法は採用されませんでした。使用権モデルでは、「使用する権利を持ち、支払義務を負っている」という経済実態さえあれば、契約の形式にかかわらず原則としてオンバランスが求められます。

ただし実務上の配慮として、短期リース(リース期間が12か月以内)と少額資産のリースについては、認識の免除を選択する余地が設けられています(企業会計基準第34号)。これは、すべての小口契約まで厳密に管理することの費用対効果への配慮です。


対象となる基準・適用範囲

基準番号と適用時期

強制適用は2027年4月1日以後開始する事業年度(3月決算会社であれば2028年3月期)から。早期適用は2025年4月1日以後開始する事業年度から認められています(企業会計基準第34号)。

2025年4月1日
早期適用 開始
以後開始する事業年度から任意適用が可能
2027年4月1日
強制適用 開始
以後開始する事業年度(3月決算なら2028年3月期)
図:企業会計基準第34号の適用時期。2025年4月1日以後開始する事業年度から早期適用が可能、2027年4月1日以後開始する事業年度から強制適用

適用対象となる契約

第34号は、対価と引き換えに一定期間にわたって特定された資産の使用を支配する権利を移転する契約(またはその一部)に適用されます。

重要なのは「リースの識別」です。すべての賃貸借契約がリースに該当するわけではありません。供給者(貸手・サービス提供者)に当該資産を自由に入れ替えられる実質的な代替権がある場合は、特定された資産は存在せず、リースには該当しません。この識別の論点は派生記事「リースの識別」で詳しく扱っています。

適用範囲から除外される主な取引としては、鉱物・石油・天然ガスなど特定の天然資源の探索・採掘に関するリース、生物資産のリースなどが挙げられます。具体的な除外範囲の詳細は適用指針第33号で確認してください。

旧基準の廃止

第34号の適用に伴い、旧リース会計基準(企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」)は廃止されます。


主な変更点:Before / After 比較

変更点の全体像(Before / After 比較表)

以下の比較表は、旧基準(企業会計基準第13号)と新基準(企業会計基準第34号)の主な差異を整理したものです。

観点旧基準(第13号)新基準(第34号)
借手の処理モデル二分法(ファイナンス・リース/オペレーティング・リース)単一モデル(原則すべてオンバランス)
所有権移転ファイナンス・リースオンバランス(資産・負債計上)オンバランス(同様)
所有権移転外ファイナンス・リースオンバランス(資産・負債計上)。簡便法ありオンバランス(使用権資産・リース負債を計上)
オペレーティング・リースオフバランス(賃借料を毎期費用計上のみ)オンバランス(使用権資産・リース負債を計上)
短期リース(12か月以内)旧適用指針にも短期のリース取引(リース期間1年以内)の簡便的取扱い(賃貸借処理)があった認識免除(費用処理を選択可)として再整理
少額資産のリース旧適用指針にも少額リース資産(1件あたり300万円以下等)の簡便的取扱いがあった認識免除(費用処理を選択可)として再整理
使用権資産の計上ファイナンス・リースのみ(リース資産として計上)原則すべてのリースで計上
リース負債の計上ファイナンス・リースのみ(リース債務として計上)原則すべてのリースで計上
オフバランス・リースの注記将来のオペレーティング・リース料の最低支払額を注記旧基準型の未経過リース料注記は見直されるが、リースに関する開示は引き続き求められる
リースの識別旧基準固有の識別基準(中途解約不能・フルペイアウト)使用権モデル(特定された資産の使用支配)に基づく識別
貸手の処理ファイナンス・リース/オペレーティング・リースの二区分同じ二区分(基本的に変更なし)

(企業会計基準第34号をもとに整理)

発想の転換:「分類」から「該当性」へ

これらの変更の根底にあるのは、判定の起点そのものの転換です。旧基準では、まずリース取引を「ファイナンス・リースか、オペレーティング・リースか」に分類し、ファイナンス・リースだけを資産計上していました。新基準では、まず「その契約がそもそもリースに該当するか(特定された資産の使用を支配しているか)」を判定し、リースに該当して認識免除にも当たらなければ、原則として使用権資産・リース負債を計上します。「ファイナンス・リースだから資産計上する」という旧来の発想は後退し、「そもそもリースに該当するか」が最初の、そして最も重要な論点になりました。

この転換により、実務の主戦場も変わります。オフィス・駐車場・倉庫・サーバー・複合機・車両など、社内の賃貸借・使用契約を幅広く洗い出し、それぞれが「リースに該当するか」を判定する契約の棚卸しが、移行作業の中心になります。リースに該当するかの判定(特定された資産・使用の支配)の詳細は、派生記事「リースの識別」で扱います。

変更点の解説

借手の単一モデル化

旧基準の最大の特徴は、借手の処理が「ファイナンス・リース」か「オペレーティング・リース」かで二分されていたことです。フルペイアウト・解約不能という定量的・定性的な基準を満たした場合だけがファイナンス・リースとされ、オンバランスの対象となりました。

新基準では、この区別を借手は行いません。契約にリースが含まれると識別されれば(特定された資産の使用を支配する権利を借手が得ると判定されれば)、原則として使用権資産とリース負債を計上します。「ファイナンス・リースかどうか」という分類作業が不要になる一方で、「その契約はリースか否か」という識別の作業の重要性が高まります。

使用権資産とリース負債の計上方法

借手がリース開始日に計上する金額は以下のとおりです(企業会計基準第34号)。

リース負債の当初測定: 開始日において未払いのリース料の現在価値。割引率はリースに内在する利率(容易に把握できる場合)か、借手の増分借入率を用います。

使用権資産の当初測定: リース負債の当初測定額を出発点に、(a) 開始日までに支払ったリース料を加算、(b) 受領した優遇を減算、(c) 当初直接費用を加算、(d) 原資産の解体・除去・復旧費用の見積額を加算して測定します。

旧基準でのファイナンス・リースの処理と基本的な計算方法は類似していますが、適用範囲が「すべてのリース」に拡大している点が決定的な違いです。

リースの識別方法の変化

旧基準ではファイナンス・リースの判定基準(解約不能・フルペイアウト)がリースの識別と実質的に兼用されていましたが、新基準では識別と分類が明確に分離されます。

識別(その契約にリースが含まれるか)は、「特定された資産の使用を支配する権利を借手が得るか」で判定します。この判定基準は IFRS 16 と実質的に同一です。識別の具体的な方法については、派生記事「リースの識別」で詳しく解説しています。

貸手の処理は基本的に変わらない

貸手については、旧基準と同じくファイナンス・リースとオペレーティング・リースの二区分が維持されます。借手の会計が大きく変わるのとは対照的に、貸手は従来の枠組みが引き継がれています。


設例

説明用の数値例です(金額の単位は万円)。

リースに関する計上額(貸借対照表)
旧基準(オペレーティング・リース)
資産
使用権資産 計上なし
負債
リース負債 計上なし
新基準(企業会計基準第34号)
資産
使用権資産 327万円
負債
リース負債 327万円
図:オペレーティング・リースでは計上されなかった資産・負債が、新基準では使用権資産・リース負債として表面化する(設例:複合機・年120万円×3年・割引率5%)

設例の共通前提条件

ケース1:旧基準下でオペレーティング・リースに該当するケース

旧基準(第13号)での処理

複合機のリースがオペレーティング・リースに該当する場合、毎期末に次の仕訳だけです。

(第1期末)
(借) 賃借料 120 / (貸) 現金預金 120

(第2期末)
(借) 賃借料 120 / (貸) 現金預金 120

(第3期末)
(借) 賃借料 120 / (貸) 現金預金 120

新基準(第34号)での処理

同じ契約でも、リースと識別されれば以下の処理が必要になります。

まず当初測定の計算:

(開始日)
(借) 使用権資産 327 / (貸) リース負債 327

第1期末の処理(利息=327 × 5% ≒ 16、元本返済 = 120 − 16 = 104、期末負債 = 327 − 104 = 223)。利息費用の発生をいったんリース負債の増加として計上し、その後にリース料(元本104+利息16)を現金で支払う処理です:

(第1期末)
(借) 利息費用  16 / (貸) リース負債  16
(借) リース負債 120 / (貸) 現金預金  120
(借) 減価償却費 109 / (貸) 使用権資産減価償却累計額 109

(減価償却費 = 327 ÷ 3 = 109、定額法・残存価額ゼロ)

第2期末の処理(利息=223 × 5% ≒ 11、元本返済 = 120 − 11 = 109、期末負債 = 223 − 109 = 114):

(第2期末)
(借) 利息費用  11 / (貸) リース負債  11
(借) リース負債 120 / (貸) 現金預金  120
(借) 減価償却費 109 / (貸) 使用権資産減価償却累計額 109

第3期末の処理(利息=114 × 5% ≒ 6、元本返済 = 120 − 6 = 114、期末負債 = 114 − 114 = 0):

(第3期末)
(借) 利息費用   6 / (貸) リース負債   6
(借) リース負債 120 / (貸) 現金預金  120
(借) 減価償却費 109 / (貸) 使用権資産減価償却累計額 109

旧基準と新基準の損益への影響の違い

旧基準(賃借料)新基準(減価償却費+利息)差異
第1期120109 + 16 = 125+5
第2期120109 + 11 = 1200
第3期120109 + 6 = 115−5
合計360327(償却)+ 33(利息)= 3600

3年間の合計費用は同じ360万円ですが、新基準では前半の期に費用がより多く認識されます(利息法による逓減効果)。また、貸借対照表に使用権資産327万円とリース負債327万円が計上されます。


ケース2:短期リース免除(認識免除)を選択するケース

リース期間が12か月以内のリースについては、認識免除を選択して費用処理のみとすることが認められています(企業会計基準第34号)。

前提条件の変更

処理

認識免除を選択した場合、毎月次の仕訳だけです:

(毎月末)
(借) 賃借料  3 / (貸) 現金預金  3

ただし、認識免除を選択した旨の開示が必要です。

ポイント

短期リース免除は、原資産の科目ごと、または性質・用途が類似する原資産のグループごとに適用します。そのグループについてすべて免除を選ぶか、すべて原則処理とするかを選択します(少額資産のリースは、方法によりリース1件ごとに選択できる場合もあります)。


ケース3:移行時の処理(累積影響額を期首利益剰余金で調整する方法)

新基準への移行時に認められる主な経過措置として、累積影響額を移行日の期首利益剰余金で調整する方法があります。旧基準で作成した比較年度を遡及修正せずに、移行初年度の期首に調整を集中させる方法です。

前提条件

(移行日:2027年4月1日の期首仕訳)
(借) 使用権資産 223 / (貸) リース負債 223

この場合、比較期間(旧基準で作成した前期)の財務諸表は修正されません。移行時の差額は、採用する移行方法に応じて期首利益剰余金や使用権資産の調整として処理されます。詳細な取扱いは適用指針第33号で確認してください。


適用時期・経過措置の詳細

適用時期のまとめ

区分時期
強制適用2027年4月1日以後開始する事業年度から
早期適用2025年4月1日以後開始する事業年度から
旧基準の廃止第34号の強制適用に伴い廃止

判定の基準は「2027年4月1日以後に開始する事業年度」かどうかです。3月決算会社(4月1日開始)であれば、2027年4月1日に始まる2028年3月期から強制適用になります。一方、9月決算会社(10月1日開始)の場合、2027年4月1日は期の途中(2027年9月期の期中)にあたるため対象外で、2027年4月1日以後に最初に始まる事業年度=2027年10月1日開始の2028年9月期から対象になります。

経過措置の選択

新基準への移行時には、経過措置として主に以下の方法が認められています(企業会計基準適用指針第33号)。

遡及適用: 過去の財務諸表をすべて新基準に基づき遡及修正し、比較可能性を最大化する方法。データ収集の負担は最も大きくなります。

修正遡及適用(累積影響額の期首調整): 比較年度を遡及修正せず、移行初年度の期首に累積影響額を利益剰余金等で調整する方法。実務上の負担を軽減しつつ、移行日以降は新基準が適用されます。

どの方法を選択するかは、財務諸表の比較可能性・システム対応の負担・開示への影響などを総合的に勘案する必要があります。


実務上の注意点

現行の基準書・適用指針の範囲で読み取れる主な留意点を整理します。

影響の大きい業種・企業

不動産賃貸(オフィス・店舗)、物流(トラック・倉庫)、小売(店舗・什器)、航空・交通(航空機・車両)、情報システム(サーバー・ネットワーク機器)など、オペレーティング・リースを多く活用している業種では、新基準への移行による貸借対照表への影響が特に大きくなります。

契約の棚卸しと識別の整備

最初に取り組むべきは、現在有効なリース契約の棚卸しです。単純なリース契約だけでなく、サービス契約に組み込まれたリース(リース区分の識別)や、「使用量に応じた支払」を含む契約など、識別が必要な契約を洗い出す作業が必要です。

旧基準ではオペレーティング・リースとして費用処理だけをしていた契約を含め、すべての賃貸借・使用契約を対象に「その契約はリースか否か」を改めて判定することが求められます。

認識免除の活用判断

短期リース(リース期間12か月以内)と少額資産のリースについては、認識免除を選択するかどうかの判断が必要です。免除を選択すれば事務処理は軽減されますが、免除を適用した資産についての開示(費用の合計額など)が求められます。

適用単位には注意が必要です。短期リースの免除は、原資産の科目ごと、または性質・用途が類似する原資産のグループごとに適用します(例えば「コピー機のグループ」について免除を選べば、そのグループのすべての契約に適用)。一方、少額資産のリースは、選択する簡便的な取扱いに応じてリース1件ごとに選択できる場合があり、適用単位が異なります。

財務指標への影響

使用権資産とリース負債がオンバランスになることで、以下の財務指標が変動します。

財務制限条項(コベナンツ)に財務指標の水準が関係する借入契約がある場合には、移行前に金融機関との確認・協議が必要になる可能性があります。

割引率の確保

リース負債の現在価値計算に用いる割引率(増分借入率等)を、契約ごとまたは類似グループごとに合理的に決定する必要があります。多数の契約を抱える企業では、割引率の設定方針を事前に固めることが重要です。


よくある誤解

誤解1:「賃貸借契約だからリースではない」

旧基準では「リース契約」と「賃貸借契約」は法形式で区別できましたが、新基準の識別は経済実態で判断します。法律上は賃貸借契約であっても、特定された資産の使用を支配する権利が借手に移るなら、リースと識別されます。オフィスの賃貸借、社用車、設備機器の借り入れを問わず、識別の判定が必要です。

誤解2:「オペレーティング・リースは短期リース免除で処理できる」

短期リース免除(12か月以内)は、リース期間の長短で決まります。延長オプションを含めたリース期間が12か月を超える場合は、たとえ当初の契約期間が短くても免除を適用できません。また、免除を選択した場合でも、開示義務があります。

誤解3:「貸手も借手と同じく単一モデルになった」

新基準で単一モデルになったのは借手だけです。貸手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの二区分を維持しています。貸手側の処理変更は限定的です。

誤解4:「早期適用すれば比較期間も自動的に新基準になる」

早期適用を選択した場合も、比較期間の取扱いは採用する経過措置によります。遡及適用を選ばない限り、比較期間は旧基準のままとなる場合があり、財務諸表の注記でその旨の説明が求められます。

誤解5:「新基準は費用総額を増やす」

3年間の数値例(設例ケース1)で示したとおり、費用合計は旧基準と新基準で同じです。変わるのは費用の期間配分(前半が多くなる)と費用の性質(賃借料から減価償却費・利息費用へ)です。損益への影響は「費用の増加」ではなく「費用の期間配分と性質の組み替え」として理解することが重要です。


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出典

本記事は公認会計士による最終監修前です。一次資料・基準書および専門家による解説をもとに編集部が作成しています。内容の正確性には努めていますが、会計処理の判断にあたっては必ず基準書原文をご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。

本サイトの内容は執筆者個人の見解であり、執筆者が所属または所属していた組織の公式見解ではありません。会計処理の判断にあたっては、必ず最新の基準書原文を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。